——レティアの無邪気な力
「あはは……やっぱり可愛いワンちゃんだよね。おびえちゃってるしぃ……かわいいっ♪」
レティアはノクスたちの怯んだ仕草を見て、微笑みながら呟いた。その無邪気な声に、ノクスたちの緊張した様子がさらに際立つ。突如として、巨大なイノシシの魔物が咆哮を放った。
「グオォォーーー!!」 その声はまるで地鳴りのように響き渡り、周囲の木々が揺れるほどの威圧感を放っていた。イノシシは鋭い赤い瞳を輝かせながら体勢を低くし、突進の準備に入った。紫色の毒の息をプシューと吹き出しながら、鋭い牙をむき出しにしたその姿は、ただの獣ではない恐怖そのものだった。その一瞬、ノクスたちはレティアの前に移動し、彼女を守るように同じく戦闘態勢に入った。漆黒の毛並みが逆立ち、鋭い銀色の瞳がイノシシに向けられている。彼らの唸り声が低く響き渡り、緊迫した空気が場を支配した。
「ムリしなくてもいいのにぃ……えいっ!」
レティアは無邪気な声を上げながら、手のひらにビー玉ほどの虹色の球体を出現させた。その球体は輝きを放ち、彼女の指先で軽く操作されるように動いた。そして、イノシシの魔物の頭を撃ち抜くイメージを強く思い描くと――『パシュッ……』
音もなく虹色の球体が放たれた。その一瞬の静けさの中、球体はイノシシの頭部に命中し、柔らかい衝撃音だけが静かに鳴り響いた。
巨大なイノシシの動きが止まり、その威圧感は一気に消え去った。レティアは輝く球体の力に驚きながら微笑みを浮かべた。「やっぱり……攻撃にも使えるんだぁ♪ これ、ファイアショットより静かで、目立たなくて良いねっ」
その声には、発見の喜びが込められていた。彼女が笑顔を浮かべている間、ノクスたちがゆっくりと振り向き、怯えたような瞳で彼女を見つめた。その姿には、彼女の力の恐ろしさに驚いている様子がはっきりと表れていた。
——レティアの狩りピロン♪と、嫌な音が頭の中で鳴り響く。その音に、レティアは顔をしかめながら小さく呟いた。
「ううぅ……なんでぇ……」 ため息をつきながら一瞬気落ちするが、すぐに気持ちを切り替えるように目を輝かせた。 「そうだ、ばぁーばにお肉を持って帰れば喜んでくれるかなぁ……?」レティアは前に座り込むノクスたちに微笑みかけると、明るい声で呼びかけた。「ノクスー! お食事して来ていーよぉー♪」
その言葉にノクスたちは一瞬目を見合わせた後、ちらちらとレティアを気にするように見つめながら、慎重な足取りで狩りに向かい始めた。その遠慮がちな様子に、レティアは少し不思議そうな表情を浮かべながらも見送る。一息ついた後、レティアは自らも狩りの準備を始めた。周囲に意識を集中させると、持ち帰れそうな小動物の気配を感じ取る。至る所から複数の反応があり、その中でも近くの気配に注目する。彼女は手のひらを軽く動かし、小さな虹色の球体を4つ出現させると、鮮やかに輝くそれを気配のする4箇所へ向けて放った。「うさぎさん、ごめんね……」レティアは、目を閉じ静かに呟いた。
『パシュッ、パシュッ……』
静かに命中した音が辺りに響き、反応していた気配が次々と消えていく。その様子に満足げに微笑むレティアは、優しく声をかけた。
「獲物の回収をお願いねー、動物さんたち♪」虹色の能力で作り出した動物たちは即座に動き出し、4チームに分かれて効率よく回収を開始した。間もなく、彼らは持ち帰った獲物をレティアのもとへ届けに戻る。
「ありがとー♪」 レティアは笑顔で感謝を伝え、動物たちを撫でて労った。その後、ノクスたちが食事をする姿を少し離れた場所から見守った。彼女の周囲には穏やかで暖かな雰囲気が漂っていた。「可哀そうだけど、うさぎさんの気配だけのイメージで狩りができちゃうんだねぇ……すごーい……。」
レティアは自身の能力の新たな発見に、思わず感嘆の声を漏らした。その未知な部分が多い能力にまだまだ知らないことだらけだと感じながら、好奇心が募り、ワクワクしている自分に気づいた。一方で、ノクスたちは夢中で獲物に食らいつき、ムシャムシャと音を立てながら取り合いをしつつ食べていた。その姿を眺めながら、レティアは驚いた表情で呟いた。
「あんなに慌てて食べなくてもいいのにぃ……でも、あっという間に半分になっちゃってるね……食欲がすごいなぁ。」かなり大きな獲物だったはずなのに、ノクスたちはその食欲を余すことなく発揮していた。食べる速度の速さに圧倒されながらも、レティアは彼らを見つめつつ考え事をしていた。
「気配もわたしの魔力を辺りに微量に放出して、薄く覆えばハッキリ分かるようになっちゃったぁ。ルーシーがどこで、何をしているのかも分かっちゃう……一生懸命狩りをしてるぅ……真面目だよね。わたしは、なんだかズルをしているみたいだよねぇ。」
彼女は魔力の使い方の応用に驚きながら、少し後ろめたい気持ちも抱きつつ、ルーシーが真剣に狩りをしている様子を想像して呟いた。 ——新たな脅威の予兆その時、食事をするノクスたちの匂いに誘われるように、獣の狼の群れが集まってきた。10頭ほどの大きな狼たちは、ペットとして飼う犬などとは比べ物にならないほどの大きさで迫力と危険な存在感を放っていた。その鋭い目つきとしなやかな体格は、まさに捕食者そのものだった。
*伝説の英雄の娘♢ギルドの動揺 身分証を手に取った瞬間、オジサンの顔がみるみる驚愕に変わり、その手が微かに震え始めた。「……え!? あ、あの……伝説の賢者様と魔術師様の……娘さん……なのか?」 その場にいた職員たちがざわつき始め、興味深そうな視線が一斉にレティアに向けられる。受付のお姉さんも、その言葉に驚いて顔をこわばらせると、慌てて身なりを整えるように姿勢を正した。「え!? わ、失礼しました。」 それまで親しげだったお姉さんの口調も、一気にかしこまったものへと変わった。 レティアはその異様な雰囲気に戸惑いながらも、内心少し誇らしげな気持ちを抑えられなかった。『そっか……やっぱりお父さんの力って、すごいんだね。でも、なんか……ちょっと居心地悪いかも。』 身分証が持つ権威を理解しているものの、それが引き起こす周囲の反応に戸惑うレティア。彼女の愛らしく無邪気な姿と、周囲のかしこまった態度のギャップが、その場の空気を一層不思議なものにしていた。 周りの視線も可愛い子供を見る視線から、その眼差しは、驚きと畏敬が入り混じったものであり、まるで伝説そのものが目の前に具現化されたかのような感覚を抱いているようだった。職員の瞳は大きく見開かれ、息を呑む瞬間、まるで時が止まったかのように感じられた。 その視線には「尊崇のまなざし」が込められており、深い敬意と憧れが溢れていた。一方で、目の奥にはほんの少しの戸惑いがあり、あまりにも偉大な存在を目の当たりにしたことで、どう接すべきか悩むような気配が漂っていた。 職員の表情は硬直していたが、それは恐怖ではなく、純粋な感嘆と希望が入り混じるものであり、伝説の英雄の娘を前にして、自分がその存在にふさわしいかどうかを無意識に問いかけているようだった。尊敬の念がその身体全体に満ち、言葉を紡ぐことすら困難に感じるほどだった。 鑑定板を差し出してきた職員も、砕けた鑑定板を見つめて頷いていて理解したような仕草
——ギルドの適性鑑定♢レティアの秘密 受付の人がふと思いついたように、いたずらっぽい笑みを浮かべながら言う。 「ふふ……お嬢ちゃんの適性を見てあげようか?」「うん! てきせー?」 レティアは目を輝かせて首を傾げる。冒険者に関わることなら何でも知りたいという気持ちがあふれていた。「特別だぞー。こっちに入っておいで。」 受付の人は手招きしながら、カウンターの奥に案内する。カウンターが高すぎて背伸びしても届かないレティアを見て、受付の人は笑顔で入口のドアを開けて中に通してくれた。レティアは嬉しそうに飛び跳ねるような足取りで奥へと進んだ。「わーい♪」 レティアは「特別」という言葉に目を輝かせ、カウンターの中に案内されると、他の職員たちも笑顔で迎えてくれた。「あはは……可愛らしい冒険者さんだな。」 職員の一人が微笑みながら声をかけると、レティアは嬉しそうに笑顔を返した。「わぁー可愛い。こっちにおいで~お姉さんのお膝に座らない? ナデナデしてあげるよー♪ お菓子もあげちゃうっ!」 受付のお姉さんが優しく手を差し伸べると、レティアはその手に飛び込むようにして膝に座り、目を輝かせた。「わぁーい。お菓子だぁ♪」 その無邪気な反応に、周囲の職員たちも思わず笑みを浮かべる。 しかし、若い受付のお姉さんがジト目で受付のオジサンを見つめると、彼は焦った様子で弁解を始めた。 「え? あ、いや……冒険者になりたいって言うから適性を見てあげようかと……暇だしな。問題ないだろ? ウロウロされてたらガラの悪い連中に絡まれるし、保護しただけだぞ!」『え? あれれ? あぁ、わたし……保護されたんだ?』 レティアはその言葉に少し驚きながらも、状況を理解しようと首を傾げた。「あぁ、なるほど……それ、面白そうねぇー♪」 受付のお姉さんもニヤッと微笑み、楽しそうにレティアを見つめた。その視線には、どこかいたずら心が混じっているようだった。 物珍しさとレティアの可愛らしい姿に惹かれ、職員たちは次々と彼女に声をかけ、囲むよ
——ルーシーのサプライズとレティアのいたずら レティアはルーシーの影に潜り込み、ひっそりとその中で過ごしていた。影の中から伝わってくるルーシーの感情——後悔と寂しさが入り混じった気持ち——に、レティアは胸が温かくなるのを感じていた。早く姿を現して抱きしめたいという衝動に駆られながらも、「今出たら追い返されちゃうかも」と思い、ぐっと我慢をしていた。 町の近くに差し掛かった頃、レティアはそっと影から飛び出した。そして、押さえていた気持ちが一気に溢れ出し、ルーシーの後ろからぎゅっと抱きしめた。 「ルーシー捕まえたー♪」 無邪気な笑顔を浮かべながら、楽しそうに声を弾ませる。「きゃっ!? え? なんでレティーがいるのよ!?」 ルーシーは驚きの声を上げ、振り返るとため息をついた。しかし、その表情にはホッとした安堵と、どこか嬉しさが滲んでいる。自然と笑顔がこぼれてしまうのを隠せなかった。「えへへ。ついてきちゃったのぉ! ふっふーん♪」 レティアは可愛らしくドヤ顔を決めて、得意げに答える。「まあ、いいわ。……何かあるかもって思っていたわよ……明らかに、あんたの反応がなさすぎたものね。」 ルーシーはそっけなく答えながらも、その声にはどこか優しさが混じっていた。嬉しさが伝わってきて、レティアは思わず笑顔を浮かべる。「……ちぇ〜! つまーんなーい!」 レティアはわざとつまらなそうな態度を取るが、ルーシーの感情が伝わってきて、心の中では嬉しさが溢れていた。「家には言ってきたの?」 ルーシーが心配そうに尋ねると、レティアは軽い調子で答えた。 「町に行くって言ってないけど……2、3日で帰るかもって言っておいたよ。」「そう、ならいいけど、おとなしくしているのよ。それと逸れないように……その、手を繋ぐわよっ。これは、仕方なくだから!」 ルーシーは恥ずかしそうに顔を赤くしながら、少し強がった口調で言った。 レティアはその言葉に嬉しそうに頷き、ルーシーの手をしっかりと握った。二人の間には、言葉にしなくても伝わる温かな絆が流れていた。 ——ギルドへの道♢年齢と未来 町の入り口でレティアは目を輝かせながらルーシーに尋ねる。 「うん♪ ルーシーは、なにをしに来たの? おかいもの?」 その問いに、ルーシーは軽くため息をつき、呆れたように答えた。
——賑やかな朝食と突然の別れ ルーシーが焼き上げた香ばしい肉の匂いが焚き火の周りに漂い、朝の澄んだ空気に美味しそうな香りが混じっている。レティアはその匂いにつられるようにテントの中から顔を出し、眠たそうに目をこすりながら外へ出てきた。「おはよー、ルーシー……朝ごはん? んぅ……良い匂いぃー。」 彼女の無邪気な声に、ルーシーはため息をつきながら呆れた顔で返事をした。 「あんた、全く警戒心ないのね……よくぐっすりと寝られるわね。」 レティアはニコニコ笑いながら、さらりと答える。 「えへへ。ノックスにシャドウパピーズを周りの警戒を頼んでたもーん♪」 その言葉にルーシーは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに納得した様子で軽く頷いた。 「なるほどね。どうりで警戒心なく寝れるわけね……。」 話しながらも、ルーシーの手は止まらない。焼きたての肉と簡単に調理したパン、そしてハーブティーが朝食として用意されると、彼女は振り返りながら言葉を継いだ。 「さ、食べちゃって! わたし、町までちょっと行ってくるね。」 その一言に、レティアの笑顔が一瞬止まる。驚きと寂しさが入り混じった表情で聞き返した。 「え? な、なんでー!? 今日も冒険じゃ……?」 ルーシーは落ち着いた声で説明を始める。 「探索や魔物討伐も仕事だけど……依頼を受けないとね。生活費を稼がないといけないの。素材の換金と報酬を取りに行かないとだし。」 レティアはその言葉に納得しつつも、どこか寂しそうに頷いた。 「でもでもぉ……いきなり過ぎるぅ……。心の準備がひつよーでしょぅ……。」 その悲しげな表情に、ルーシーは気まずそうに視線を逸らして言う。 「そんな顔をされると思ってたから言えなかったのよ。そういうの苦手なのよ……。こう……仲良くなったこともないしさ……でも、別れじゃないからね! ちゃんと戻って来るし……ね?」 しかし、意外にもレティアは明るい声で返事をした。 「んー、そっかぁ。うん、わかったぁ……。」 朝食を食べ終えると、ルーシーは逆に不安を感じ始めた。レティアが予想以上にすんなり受け入れたことに驚き、思わず声をかけてしまう。 「ね、ねえ、レティー。町から帰ってきたら……どうしよう? また、一緒に行動する?」 ルーシーの恥ずかしさと不安が混ざった声に、レティアはあっさりと笑顔で
——焚き火を囲む夜「わぁ、焚き火っていいねぇ! 暖かくて、きれいだよぅ♪」 レティアは焚き火を囲むように座り、嬉しそうに手をかざして暖を取っていた。その無邪気な姿に、ルーシーも少し微笑みながら腰を下ろした。「まあ……こうして火を囲むと、夜の山でも安心感があるわね。静かで落ち着くし……。」 ルーシーは火を見つめながら、小さく息をついた。 焚き火のパチパチという音が二人の周りに広がり、火の光が木々の影を揺らしている。二人は持ってきた食材を使って簡単な料理を楽しみながら話を始める。レティアが楽しそうにしゃべり出した。 「ねぇねぇ、ルーシー! 焚き火って何か特別な感じするねぇ。なんでだろー?」「……それは多分、みんなが火を囲むと安心するからじゃない? 明るくて、暖かくて……魔物が寄ってこないってのもあるけどね。」 ルーシーは冷静に答えつつも、焚き火の心地よさに自然と微笑みを浮かべていた。 レティアは炎を見つめながら、ふと昔のことを思い出すように言った。 「……お父さんもこういう風に、みんなで焚き火を囲んだことあったんだろうなぁ。こうやって楽しかったとおもうなぁ。みんなで冒険の話とか、いろいろ聞いたんだろうね〜。」「そう……レティーのお父さんは冒険者だったのよね。すごい人だったんでしょ?」 ルーシーが静かに問いかけると、レティアは少し誇らしげに微笑んで答えた。 「うん! すっごくすごい人だったよぅ。わたしも、そんな冒険者になりたいんだぁー」「ふふ……その夢、叶いそうね。レティーなら無茶ばっかりだけど、才能があるし……。」 ルーシーは少しからかうように言いながらも、どこか優しい目でレティアを見ていた。 夜が更け、星空がさらに濃くなっていく中、二人は焚き火を囲んで穏やかな会話を続けた。レティアが時折口ずさむ鼻歌と、ルーシーの静かな相槌が心地よい調和を生む。「これってさぁ、冒険者の憧れの夜だよねぇ! またこうやってキャンプしたいね、ルーシー!」 「ええ、いいけど……あんまり何度も火を焚いてると、薪がなくなっちゃうわよ。」 ルーシーが軽く笑いながら応じると、レティアも楽しそうに笑い声を響かせた。 ——星空の下で交わす願い 焚き火の光が二人の顔を優しく照らし、無数の星が瞬き、濃紺の夜空に宝石のような輝きを放っている。山の頂上からは
——自然の美しさとランチタイム そのあと、レティアが近くの石の上に座り、小さな花や草を並べながら楽しそうに遊ぶ様子を、ルーシーは少し離れたところから見守っていた。太陽の光、風の音、川のせせらぎ——その場には自然の美しさと穏やかなひと時が広がっていた。 少し進むと、見晴らしの良い場所にたどり着いた。そこは大きな平らな岩が広がり、空が大きく開けた絶景ポイントだった。眼下には広大な森が広がり、遠くには小さな村や、さらに奥には雄大な山々が連なっているのが見えた。風が心地よく吹き、二人はその場に腰を下ろした。「わぁー! すごい景色だねぇ! 頑張って登った甲斐があったよぅ♪」 レティアは両手を広げて大きく深呼吸をし、開放感を全身で味わっていた。一方、ルーシーは少し息を整えながら、鞄からお弁当を取り出す。「これだけ頑張った後だし、美味しく食べられそうね。ほら、これ。」 ルーシーは丁寧に包まれたお弁当を広げ、中にはパン、チーズ、ハム、そしてばぁーばが作ってくれた小さなサンドイッチが詰められていた。さらに果物も添えられ、色鮮やかなお弁当に日の光が映えている。レティアが狩りで仕留めたウサギ肉や鳥の肉のおかずも入っていた。「わぁ! ルーシー、すごーい! こんなに準備してたのぉ?」 レティアは目を輝かせながらお弁当を覗き込む。ルーシーは少し照れたように肩をすくめる。 「わたしじゃなくて、ばぁーばが準備してくれたのよ。でも、食べる前に手を洗いなさいよ。」「えへへ、もちろんだよぅ!」 レティアは魔法で水を生成し、二人で手を洗った。そして、岩をテーブルに見立ててお弁当を広げる。「いただきまぁーす!」 二人は声をそろえてお弁当に手を伸ばした。一口サンドイッチを食べたレティアは、目を輝かせながら声を上げる。 「わぁ、美味しい! チーズが濃厚で、ハムもジューシーだねぇ! これ、ばぁーばの愛情がこもってるね!」「そうね。ばぁーばの料理は、やっぱり家庭の味って感じがして落ち着くわよね。」 ルーシーも静かに頷きながら、小さなパンに手を伸ばした。 食べながら二人は景色を眺めたり、次の冒険について話したりしていた。レティアが「次はあっちの山にも登りたいなぁ♪」と指差すと、ルーシーは少し困った顔をしつつも笑みを浮かべる。 「また登るの? まあ、付き合ってあげてもい